・工程を自動化して人手不足を解消したい!
・効率化や自動化の注意点は?
今回は、このような製造業に関わる技術者や管理者であれば、考えておきたいテーマについて説明します。
このテーマにおける2つのキーワードがあります。
それは、「効率化」と「自動化」です。
労働人口が減少している現在、どの産業においても工程の機械化やロボットやAIを活用した、ファクトリーオートメーションの取り組みが急がれています。
しかし、やみくもに自動化を行っても、生産性を悪化させている課題箇所であるボトルネックが残っていてしまったり、工程自体の柔軟性が失われたりして生産上の都合が逆に悪くなったりします。
製造業で利益を上げていくためには、生産性を向上させる事は必須になりますが、自動化のために投資を行う以上、製造原価は上がっていますので、それ以上のメリットの確保と自動化導入の弊害を無くすようにしなければ、取り組み自体が失敗していまいます。
今回は、工程の効率化が上手くいかない原因と効率化の方法を考えていきます。
次回に、工程の自動化についての注意点を解説します。
■工程の生産性が下がる3つの原因
現在、製造業に求められている事を挙げていくと。
1.製品開発サイクルの短縮や短期化
2.コスト低減
3.製造納期の短縮
4.品質向上
このように、いろいろな矛盾や無茶を求められているのが現状です。
より良いものを、速く、安く、高品質な状態で作れ。
という理想に満ちた内容だからです。
しかし、現在の私たちの生活では特に不足しているものが無いわけですので、こういう要求が挙がってくるのも理解はできます。
ひと昔前のようにモノが無い時代ではなく、逆にモノが余っている時代なのです。
顧客ニーズとしては、必要だから買うのではなく生活水準を上げるために買うという購買意欲に変化している時代なのです。
ですので、先ほどのように「より良いものを、速く、安く、高品質な状態で作れ」という要求になります。
これが市場のニーズなのですから、実現するために努力しておかないと将来的な経営にダメージが生じてきます。
そのためにも、効率化や自動化が必要なのです。
しかし、生産性を上げる事が目的なのに逆に下がってしまうケースと、その原因があります。
代表的な原因を3つ紹介します。
■原因① 人手不足
団塊の世代の大量退職や、技術の伝承に時間が掛かる事から、技術職や技能職は圧倒的な人手不足です。
特に製造業では、深刻な人手不足に直面しています。
経済産業省が日本の製造業の調査を行った「ものづくり白書2019」では、製造業における新卒者の就業人数は、ここ数年増加傾向にあるものの、10年以上の期間で見てみると10万人以上も減少しているようです。
特に従業員数300人以下の中小企業では、新卒者の就業者数が全国で30万人も減少しているなど、人材の確保が難しいのが現状です。
(図)2019年版ものづくり白書 第3章 ものづくり人材の確保と育成より引用。
これを受けて、一部の生産を海外工場に移管したり、国内工場に外国人労働者を活用するなどして、労働力不足に対応してきました。
しかし、海外においても少子高齢化や労働力の需要増加を受け、人材の確保が難しくなっているようです。
海外の調査でも、約半数以上の企業が人員確保に苦労していると回答しています。
ですので、工場内の各工程を見てみても、必要な人員が確保できていない事が殆どです。
常にギリギリの人員で工程をまわしています。
有給などで欠員が出た日は、その工程に大きな負荷がかかり生産性を確保できていません。
常に現場からは、人員補充を上長に訴えている事でしょう。
しかし新しい人員を募集しても、そもそも労働人口が減少していますので、なかなか集まりません。
新しい人員が確保できたとしても、このような過酷な環境での作業が多いため、離職率が高いのが現状です。
人員も従業員の満足度も、どちらも確保できていないのです。
この課題が、他の原因にもかかわってくる大きな問題になります。
■原因② 不良が多く対策もできていない
作業者によって技術レベルが異なりますので、誰もが同じパフォーマンスを発揮できるわけではありません。
技術レベルの格差から、作業ミスが生じやすい事も工程の効率化が進まない原因のひとつです。
とは言っても、先ほど説明したようにギリギリの人員で日々の生産をまわしていますので、熟練の技術者から若手への技術伝承を行うだけの余裕がありません。
何かしらの不良が発生した場合、熟練の技術者は不良の対策にコミットする時間が増え、そうしている間にも新たな不良の種が生まれたりしています。
所謂、ハインリッヒの法則です。
ちなみにハインリッヒの法則とは、労働災害における経験則になりますが
というものです。
熟練者と若手との技術格差を埋めるための、ノウハウの蓄積が出来ていないため、不良は多く、根本的な対策も出来ていない事が多いのが現状です。
作業を標準化していても、標準通りに作業を行う余裕がない事も原因と言えるでしょう。
せっかく標準化した内容が、まさに絵に描いた餅になってしまっているのです。
■原因③ 部署間のセクショナリズムが強い
製品の製造には、多くの部署が関わっています。
これら複数部署が連携して製品をより良いものにしていくのですが、同じ会社のメンバーであるにもかかわらず、対立していまっている事が多々あります。
スムーズなコミュニケーションが出来ていないのです。
コミュニケーションの場が、そもそも無いという場合もあります。
こうした場合の生産現場は、対立している上流の部署と下流の部署の板挟みにあっています。
データの受け渡しミスや連絡ミスによって、生産のロスや不良が発生したりします。
しかし、製造したのは生産部門ですので、製造責任を問われます。
聞いてもいない事で怒られたり、謝罪する必要が出てきてしまうのです。
生産部門としては、やってられません。
ますます対立は深くなっていきます。
このように部署間のセクショナリズムが強く、コミュニケーションが円滑でない事は、工程の効率化を阻害する原因と言えます。
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■まとめ
生産性が落ちてしまう原因について、3つ紹介しました。
2.不良の発生
3.コミュニケーション不足
この3つです。
これらの原因を改善して、工程を効率化していくわけですが…。
既に説明が長くなってきましたので、効率化を行う方法については次回で詳しく掘り下げたいと思います。
効率化を実施していく内容は、大きく分けて2つの方法があります。
誰もが知っていて、工場で既に実践している内容かもしれませんが、その方法の本当の意味を理解していない企業が多いので、役に立つ内容になるかと思います。
是非楽しみにしていてください。