これまでの説明で、以下の2点が重要だとお伝えしてきました。

未だ、そちらの記事を読んでいない人は、読んでから戻ってきて頂ければ幸いです。

 

関連記事

今回は、統計学におけるバイアスについて解説していきます。 ちなみにバイアスとは、傾向、偏向、先入観、データ等の偏り、のことを指します。バイアスが恐ろしい理由は、認識が偏ることで判断を誤ってしまうことです。[…]

 

関連記事

前回の記事でランダム性を確保することは難しい、と述べました。その理由は、私たちの知らないうちにバイアスが掛かってしまうからです。 ※前回の記事はコチラ[sitecard subtitle=関連記事 […]

 

 

念のため説明してきた重要な点とは……

人は知らないうちにバイアスが掛かってしまう
ランダム性を確保するのが、どれほど難しいのか。

この2つになります。

 

 

これらバイアスをかけないことや、ランダム性を回避することが重要なのは分かりましたが

逆に、学校や会社など様々なコミュニティで一般に用いられる、多数決などによる意見の一致

良いことなのでしょうか?

 

 

 

え??
意見が全員一致しているのだから、それは正しいということでしょう!?

確かに、そう思うかもしれません。

 

しかし、もしも全員の意見が一致したとき、そのような場合においては

それまでのプロセスやシステム自体を疑わないと、それは間違った答えなのかもしれない。

という、驚きの話があるのです。

 

 

読むのめんどくさーい!という人は、動画で聞き流しをドウゾ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■満場一致のパラドックス

全員の意見が一致したときは、それまでのプロセスやシステム自体を疑わないと危険である。

このように、お話しました。

 

 

ちなみにパラドックスとは、日本語の意味に直すと「逆説」や、「矛盾」などにあたる言葉になります。

数学や哲学などで、よく出てくる言葉です。

 

経営者には必要な考え方、と言ってもよいでしょう。

 

 

その理由の一つとして、かのドラッガーも満場一致は危険だと提言しているのです。

ドラッガーの言葉を引用します。

 

成果をあげる者は、意図的に意見の不一致を作りあげる。

そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によって騙されることを防ぐ。

 

 

 

これを分かりやすい例で説明している話に、「犯罪の目撃者」というものがあります。

こちらは、TED-Edのアニメーション動画が解りやすく解説されています。

 

以下にリンクを貼っておきます。

Imagine a police lineup where ten witnesses are asked to ide…

 

 

 

 

 

■満場一致のパラドックスの説明

私たちの記事でも、似たような例で満場一致のパラドックスを説明してみます。

 

ある日、私が勤務している会社で盗難事件がありました。

盗まれたものが高額であったため、警察を呼んで正式に捜査が始まりました。

すると、当日残業をしていた社員の中から、5人の容疑者を絞り込むことができました。
Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの5人です。

当日、他に残業をしていた社員の中に、怪しい人影を見たという目撃者が居ることが分かりました。

目撃者の人数は10人でした。

そこで、この目撃者10人に犯人の顔を確認してもらいました。
そして犯人だと思う人を指さしてもらったのです。

すると、目撃者全員がAさんを指さしました。

全員が、Aさんが犯人だと一致したのです。

これで事件は解決。

 

ではありません。

 

内容としては、これが満場一致のパラドックスです。

 

 

 

 

 

 

■満場一致のパラドックスを解説

それでは、解説していきます。

 

目撃者が、犯人はAさんだと意見が一致したのだから、犯人はAさんで決まりでしょ?

そう思いますよね。

 

目撃者が同じ容疑者を指名する人数が多ければ多いほど、その人が犯人である確率があがるのは確かです。

しかし、意見の一致が全員に近いほど、その結果の信頼性が下がるのも事実です。

 

 

実際に、どんなに自信を持っていたとしても、目撃者のうち48%が間違った容疑者を指名すること

研究から分かっています。

 

 

本来はこのような確率の中で、満場一致になるほうがおかしいのです。

何かしらのミスリードを疑うべきです。

 

 

 

そもそも、次のような問題であれば満場一致のパラドックスは生まれません。

 

・5個の食器のうち1個だけスプーンで残りは箸です。

Q:スプーンはどれですか?

 

この問題であれば、全員がスプーンを指さすと思います。

 

 

 

では、この問題と先ほどの問題では、何が違うのでしょうか?

その答えは「人間の顔」だからです。

 

 

以前の2つの動画で説明してきた通り、人間には先入観や偏見などのバイアスが掛かってしまうのです。

 

 

 

朝のニュース番組でやっている占いなどもバイアスが掛かる事例のひとつです。

 

今日のあなたはラッキーです!

今までやれなかったことが、頑張ればやれるようになるでしょう!

 

などと言われたらどうですか?

 

 

今日は少し頑張ってみよう!

と多くの人が思いますよね。

 

 

 

このように多くの人が、都合の良い情報だけを集めて思い込む癖があります。

 

これを『確証バイアス』といいます。

 

 

 

 

 

 

 

■確証バイアス

 

クイズ番組の問題も確証バイアスが働きやすいものです。

 

番組でやるくらいの問題だから、きっと難しい問題なのだろう……

と思ってしまいがちです。

 

 

確証バイアスを避けたり、軽減したりするためには「反証情報」を取り入れる必要があります。

反証情報については、また別の機会に説明したいと思います。

 

 

ともあれ、多数決における満場一致は、確証バイアスが働いている可能性が高くなります。

犯人の顔といった、人間の顔を記憶で判別するという条件なら、尚更確証バイアスが働きやすくなります。

 

 

自分が怪しいと感じている、怪しいと思っている。

この感情を肯定したいという無意識から、盗難事件の事象を結びつけてしまうのです。

 

 

他にも、先ほどの盗難事件のケースだと、最初の3、4人がAさんを指名したら、残りは同調圧力で指名してしまう、ということも考えられます。

 

 

 

 

 

 

■ビジネスでの活かし方

今回のお話は、経営者には必要な考え方だとお話ししました。

 

 

会社では

何か重要なことを決めるとき
予想外の問題に遭遇しないために

 

意見が満場一致にならないことが必要です。

 

 

本来であれば、重要な決定こそ意義や異論がなく考えが一致する、なんて事はあり得ません。

管理職や役員が多く参加する会議では、その役職毎の正しい意見があるからです。

 

その人の役職や状況によって、その人の立場に立って言えば正しいことを言っているのです。

意見が食い違う、お互いの考えが交差するのは当たり前です。

 

 

もしも、このような状況にもかかわらず、満場一致で反対意見が出ないのだとすれば……

それは2つの可能性しかありません。

 

1つ目は、社長が役員や管理職の反対意見を封じ込めてしまう場合。

2つ目は、参加者全員に直接関係ない議題である、つまり他人事として考えていない場合。

 

この2つです。

 

 

 

 

 

 

 

 

■まとめ

いかがでしたか?

人間は不思議なもので、感情と理論の両方が行動原理となって動きます。

 

そして、人と人がお互いを理解するためには、コミュニケーションが欠かせないのも事実です。

 

 

しかし、今回紹介したように「確証バイアス」が働いた状態での話し合いは、

信頼性の低い偏った一方の意見に誘導されてしまう危険性があります。

 

 

会社、特にチームで活動する場合、組織上の上下関係はありながらも、お互いの意見を言い合える。

そんな関係性にしていかなくては良い結果に繋がりにくいのです。

 

チームワークの無さが可能な仕事を不可能にし、

チームワークこそが不可能な仕事を可能にする!

 

私は、このように考えています。

 

 

意見の不一致を活用しながら意思の疎通をはかり、チームワークを育てていきたいものですね。

 

もし今回の記事が面白いと感じていただけたら、ぜひ他の記事も読んでみてください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最新情報をチェックしよう!
>YouTubeにて動画教材公開中

YouTubeにて動画教材公開中

私たちprofessional養成講座では、ホワイトボードアニメーションを活用した学びを、教育コンテンツを提供します。より大きな学びを必要とされている方は、お気軽にお問い合わせ下さい。info@soldering-tec.com

CTR IMG